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彼岸花を抱いて

第13章 忘れない




智晃
「本当にありがとう、母さん父さん。…また会いに来る」


彼の言葉に二人は微笑みながら頷く。
そして、少しだけ広い空間に下がっていた二人の元まで智晃が走ると凛が自らの首まで覆っているインナーを下げ首に嵌まったリングを晒す

それを初めて見た智晃は驚いた。
黒の石のリングを見られるなんて思っていなかった


凛がそのリングを一撫ですると、淡く光りその広い空間に妖獣が現れた。
光沢がかった純白で大きく立派な翼、鋭く尖った角、地にギリギリつかない綺麗な尻尾まで真っ白なユニコーンとペガサスが混ざった彼女にぴったりな存在に智晃と両親は数回、瞬きをした



智晃
「グリフォンタクシーじゃねーのかよ」


「はい。今日は私の妖獣、大福ちゃんで行きます」

智晃
「“大福”?」


その神秘的な姿には似合っていない名前に智晃はきょとんとしながら凛を見ると、隣に居た凉晴がこっそり耳打ちをした


凉晴
「突っ込んだらキリないぞ。凛のネーミングセンスに」


事務所の名前もセンスが無かったのを思い出しつつ凉晴の言葉を聞けば、やっぱりかと智晃は納得した
だが、当の本人はにこにこしながら首を傾げている

何だか感動している所に残念だ、とばかりに智晃は溜め息を溢すがこれくらいが丁度良いのかも知れないとも感じた



「さ、乗ってください」

智晃
「お、おう」


凛に撫でられ気持ち良さそうにしている大福に近付き、彼女に視線で乗っても平気か問うと頷いた。
なので、智晃はゆっくりと大福の背中に乗りそれに続いて凉晴も跨がる
そして、最後に大福の首の真後ろに凛が乗る


智晃
「父さん、母さん…元気でな!」


「智晃も!」


「頑張れよっ」



それを聞き終えると凛と凉晴は二人に会釈をし、大福へ合図をすると白い脚で空へと走り出した。
小さくなっていく二人の姿に智晃は手を振り続けた

こうして、智晃の人間界での生活は幕を閉じたのだ─…



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