第13章 忘れない
智晃が紛いモノと接触して数日が経った。
あの日、凛に痛みをとってもらったお陰で不自由なく動けたが傷がしっかり治るのにはまだ少しかかりそうだ
凛に傷も治すか問われたが、そればかりに甘えてはいられないという気持ちもあったのだが、一番は痛みを覚えておかなきゃいけない、そう思ったからだ
そして、あのまま智晃と凛は少女の姿をした紛いモノのお墓を創った。
中身はないが自分達の想いがある…それだけでも良いのではと智晃は思った
凛
「…来ましたね」
少女の墓に寄ってから智晃は事務所へ顔をだした。
すると、凛と凉晴が立ったまま彼を待っていて智晃は不思議そうに首を傾げる
凛
「智晃。…帰る時が来ました」
智晃
「え…」
凛
「貴方の元の力を戻せるくらいに身体に耐性がつきました」
凉晴
「紛いモノのお陰だな」
智晃は未だに言葉を理解できない。
いや、理解は出来ているものの…信じられないのだ。
自分がそこのレベルに到達するのは当分来ないと思っていたし、少女の時だってろくに魔法も使えていないし一方的にやられるだけだった。
それなのに、到達できたのかと…不思議でならない
凛
「前の貴方とは違います。…ディアさんと戦った時は一方的にやられ、後半は反撃が出来ませんでした。ですが、今回はボロボロになっても…反撃できました」
智晃
「そう、か……沢山、教えてくれた二人のお陰だな。…ありがとう」
お礼を述べて頭を下げる智晃の表情は浮かない。
その理由を凛は知っている
凛
「明日の夜までご家族で過ごしてください。…その後、出発します」
凛の言葉に智晃は、ばっと顔を上げて嬉しそうに笑って大きく頷いた
智晃
「凛、行く前に両親に挨拶してくれよ?」
凛
「はい。必ず」
それを確認すると智晃は来たばかりの扉をくぐり、自宅へと走った
凉晴
「良いのか」
凛
「勿論です。…長い時間共に過ごしたのです。それに、中々会えなくなるんですからお別れは必要ですよ」
凉晴
「そうだな」