第3章 一章
評議会室へと戻るとやはり三年生は試験について気になるのか、
探るような目でこちらを見ていた。
「試験の内容については聞かされてないよ。少しコネを使わせてほしいって話」
「へぇー、珍しいこの学校、顔が広いと思ってたんだけど」
「今年は従来の主旨と違った試験にするとは聞いていたけど」
「お前のコネとかどんなだ?」「あれ、女木島さん気になる?」
普段、必要以上に話を掘り返す事のないクラスメイトに少し目を瞬かせる。
「そりゃぁ、気になるっすよ。先輩休学してたし」
「なのに無駄に顔と財力がある学校に頼られる程のコネ持ってるとか、」「危ない橋渡ってるんじゃないかと」
「・・・・・」
二年生の子達は正直者というか、オブラートに包むことの知らないお子様が多いというか
「内緒。まぁ、強いて言うならバイト仲間・・・かな?色々やってるから知り合いが多いの」
敢えて教える必要性も無いので適当にはぐらかす。
「でも大丈夫かよ。神菜はその気がなくても知り合いってだけで妙な勘ぐりする連中もいるだろ?」
「そうならない為にも守秘義務は徹底して下さい。
まぁ、バレたところで試験に何も関係ないけど、ハードルが高くなることはあれど下がる事はないし。寧ろ、手伝いさせられいる分他の皆より、ハードル高いよ」
紙の束を揺らしてみせる。
「と、言うわけで早退させて貰います。先生には許可貰いました」
鞄を取り出して紙の束を詰める。
「病院は?」「行かないよ。暇ないもん。サッサと帰ってこれどうにかしないと」
よし!準備万端。
「おや、あれだけ言われてまだ、行ってないのかい?」
低く地の底から這い出てたような声を聞き、ピシリと体が凍りついた。
油の差されていない金属のように首を声のした方へと目を向ける。
勿忘草色の淡い紫のふんわりとした短い髪と海を思わせる明るい青い目。穏やかそうな柔和な容姿の男性が立っている。
「迎えに来たよ」
その容姿の通り穏やかでやんわりとした声でこちらに手を差し伸べるが、信じるなかれ、彼は今、憤懣遣る方無いという思いを必死で堪えて行動している。捕まったら最後、病院連行、正座説教コース待ったなしだ。
「あっ!そういえば寮の方に忘れ物したんだった!ごめん、これ持って先帰ってて!」
鞄を投げ渡してその場を立ち去った。