第2章 序章
「・・・・と、言う訳で無事三年生になれました。」
極星寮に戻ると、理美が重石よろしく腰元に抱きついてきたのでそのまま食堂まで一緒に向うと、食事中の皆が此方を向き神妙な顔をしていた。
察しがつき掻い摘んで説明する。
「ヘェ〜、意外と融通が利くんスねぇ、この学校。」
十傑の一席と二席に白紙に戻された。
とは、流石に言わなかったが、一色慧は何となく察しているらしく苦笑していた。
「まぁ、高卒資格を貰うチャンスは有難くもありますがね。」
理美は少し不貞腐れた様に顔を膨らませていた。
まんまるの柔らかい頬をツン、と摘んでやる。
「じゃあ、部屋の鍵はそのままアンタ持ってな。」
「畑の方も先輩にお返ししますね。」
寮母と一色がそう言ったが、首を振りそれは辞退した。
「畑は今まで通り一色君に任せるよ。家の方の管理もあるから貰ってくれた方がぶっちゃけ助かるんだ。家から通うつもりなので、鍵はとりあえず、そちらで。少しノートとか色々置いておかせて貰いますが、入られて困る事もまず無いと思うので」
そう言って挨拶を済ませて、また。部屋を一通り片付け。帰り道を歩く。途中振り返ると食事を終えた皆、此方を見送ってくれていた。
理美を挨拶をする様に促すも先程からしがみ付いて離れようとしない。これは、相当怒ってるなぁ。
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突然の来客を迎える慌ただしい休日となった。
見送った後疲れがドッと押し寄せたものの一年生だけで集まって話し込んだ。
「変わった人だったわよね。」「でも優しい人でよかった。」
「けど只者じゃないぞ。あの先輩。1年間休学で進級試験も免除されたんだから」「それよりも・・・」「どうした?丸井?」
「何で、また、僕の部屋に集まってるんだよ!?」
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帰路の中、腕にしがみ付く妹はまだ不機嫌だった。
「ごめんね。」
寂しい想いをさせない為に、何よりお互いの為にいっぱい話し合った。
宥め賺してようやく許可を貰ったというのに、この結果なのだから無理もないか。
「なるべく早く帰るからね」
強く断れば良かった筈なのに、やはり欲が出てしまった。今はそれしか約束出来ない。
桜並木を歩いていると、不意に鈴が鳴りひびく。
訪いの合図だ。