第86章 今の私。
「・・・。」
寮に帰り、ベッドの上でぼーっとしていた。
思い返す。
あの時、私は今吉先輩にキスをされた。唇に。
たった3秒くらいのキスだった。しかもファースト。
し終わった後に、今吉先輩はもう一度「すまんの」と言って玄関のドアを閉めてしまった。
私がなにかを言う前に。
唇に指をもっていく。
まだ感触が忘れられない。温かくて、やわらかい。
妙にふわふわもしていて・・・それで・・・
バタンッ
日向「雅ー」
「ひゃぁふぅぇっ!?」
ノックもせずに、いきなりドアをあけられた。
日向「なんだその返事。プッ」
「せ、先輩がいきなり開けるからでしょう!?着替え中とかだったらどうしてくれるんですか!」
日向「そん時は、あ、悪い。で、終わる」
「ひどいっ!」
涙目で答えると先輩は笑った。
そのまま私の隣に寝転がった。
日向「ブラックラブ解散したんだってなー?」
「え。だ、誰からそのことをー・・・って、伊月さんですよね。」
日向「決まってんだろ」
「あはは・・・。」
日向「いいのかよ」
「え?」
日向「事情も一応聞いたけどよ。このままでいいのかって聞いてんだ」
先輩の顔は少し怒っているようにも見えたし、心配しているようにもみえた。