第57章 もうどうしていいか分からなくなる。
「伊月・・・さん?」
抱きしめてる腕が震えている。
泣いてるー・・・?
伊月「俺もわかんない・・・。」
「え・・・?」
伊月「俺だってわかんねぇよ!」
声をあげた。
伊月さんのこんな声を聞いたのは初めてで
私もおおきく目を見開いた。
伊月「なんで・・・好きになっちゃったんだろ。」
「伊月さん・・・・。」
伊月「小倉はいい子だって最初から思ってた。でも、好きになる必要なんてなかったんだきっと」
震えた声が肩に響く。
伊月「・・・なんで小倉なんだよ。」
悔しく、切ない思いが伝わってくる。
伊月「・・・こんなこと言っても、変わるものなんてなにもないんだけどな・・・。」
「伊月さん・・・」
伊月「困らせてごめん」
伊月さんが私を離す。その時には涙が止まっていた。
伊月「きっとこれが、恋愛感情なんだって、俺分かったんだよ」
「・・・・・」
伊月「・・・聞いてくれてありがとう」
「いえ・・・。」
伊月「また電話していい?気まずいかもしれないけど、これで最後。これからは何もなかったように小倉とは普通にしてタイ」
「はい・・・。」
伊月「ありがと。じゃ、行こうか」
いつもの伊月さんだった。笑顔で優しく話す、あの伊月さんだった。・・・私、普通の時ってどうしてたっけ。
ねぇ伊月さん。普通って、なんでしたっけ。
私がこんな思いする必要なんでないのに。
もうわかんないよ・・・。