第11章 もう二度と戻らない
コールマン班長の言葉に、私はおばさんの事を思い出して、ピキと身体が固まった。
そしてすぐに、泣き崩れているおばさんの様子を想像して、胸の中に悲しみが次々と流れ込んできた。
おばさん…どれだけショックを受けたことだろう…。おじさんを失ってから、元気が無くなってしまったおばさん…。
私たちが遊びに行った時は、明るく振舞ってくれていたけれど、いつだって、おじさんを失った悲しみで胸はいっぱいだったと思う…。
「そして今朝、その母親が亡くなったという連絡があった」
そう言って俯いた班長の顔を見つめて、私は一瞬、彼が何を言っているのか理解できなかった。
そのままぼうっと突っ立っている私を見下ろして、班長は唇を少し震わせると、続けて話し始めた。
「もともと、夫を亡くされて気落ちしていたところに、息子までも失い、一気に憔悴してしまったそうだ。
食事も喉を通らない状態が数日続き、今朝、まるで眠るようにして息を引き取ったと…」
お兄さん夫婦が、そう伝えに来てくれたと、この事をできればラウラにも伝えてあげてほしいと言っていたと、班長は言った。
その声を聞きながら、私は自分がここではないどこか遠くに立っているような感覚になって、自分の身体なのに自分の身体ではないような気持ちになっていった。
心と身体が乖離する…。
今までに、一体何度経験した感覚だろう。大切な人を失った時には、いつもこの感覚に襲われる。
おばさんが、亡くなった……?
私は、記憶の中にあるおばさんの顔を必死で辿った。
ヤンチャ坊主みたいな夫のことを叱りつけて豪快に笑っている顔…、息子の淡い恋心に気づいてニヤニヤといたずらっぽく笑っている顔…、私とライデンが遊びに行った時、帰り際にずっと手を振ってくれていた時の包み込むような優しい笑顔…。