第10章 同い年
遺体の収容作業がひとまず終わり、火葬は明日行うこととして、本日の任務は終了した。
朝の出発から考えると、実に12時間以上にも渡って任務に当たっていたのだった。
ライデンの死を知ってしばらくの間放心状態だった私であったが、短時間だけ休ませてもらってからまた作業へと戻っていた。
ナナバさんとゲルガーさんが心配して「無理しないで休んでいろ」と言ってくれたけれど、じっとしていると、ライデンの真っ白になった顔を思い出して気が狂ってしまいそうだったから、身体を動かして気を紛らわしていたかった。
作業終了後、私は夕食を摂る気になれずに、そのまま宿舎へ戻ることにした。
ナナバさんが心配して「部屋まで送る」と言ってくれたけれど、中堅兵士であるナナバさんには、新兵とはまた別の、やるべきことがたくさんある。
その業務の関係で他の兵士が彼女を呼びに来たので、私はお礼を述べた上でナナバさんの申し出を断った。
「無理だけはしないでね」と、心配そうな表情を浮かべつつ、ナナバさんは何度も私の方を振り返りながら、呼びにきた兵士と一緒に歩いて行った。
ちなみにゲルガーさんは、遺体搬送作業の途中で、他の業務のために呼ばれて行った。
彼もまた、私のもとを離れる際には非常に気にしている様子で、「何かあったら俺のことを呼べよ」と言ってくれた。
ここまで気遣ってくれる先輩がいるということは、本当に心強くありがたいことだと思った。心の底から感謝しても、感謝しきれない。
広場を出て、本館の建物の廊下を、まるで幽霊のような足取りでフラフラと歩いていく。
宿舎までの道のりが果てしなく遠く感じる。
何だかめまいがするし、足の裏がフワフワする。さっき流したたくさんの涙と一緒に、「元気」を構成している何もかもが流れ出してしまったような気がした。
今、私は一体どこを歩いているんだろう…。
ぐらり、と足元が揺れて、私は廊下の端に座り込んでしまった。足に力が入らない。立ち上がる気力も出ない…。