第37章 反撃開始
ヒストリアのことは、実を言うとナナバさんから聞いて以前から知っていた。
ナナバさんが「新兵の中にお人形さんみたいに可愛い子がいる」と話していたのだ。
初めてその姿を見た時、ナナバさんの言う通り、冗談抜きで本当にお人形さんみたいだと思った。
整った顔立ち、絹糸のような金色の髪、華奢な手足。
本当に生身の人間だろうかと、思わず疑った。
こんなに容姿の整った人間が存在することに単純にびっくりしたのだ。
そして実を言うと、その後私はこっそりと彼女の絵を何枚も描いた。
ナナバさんやペトラもそうだけど、容姿の整った人間の事は、無条件に描きたくなってしまうのだ。
綺麗なものは描いてみたくなる。それは風景でも人物でも。
そうやって描いている時にふと、彼女の笑顔はどこか寂しそうというか、無理に作っているみたいだな、と感じた。
だけど、彼女がそこにいるだけで、まるで花が咲いたように場が明るくなるので、きっと私の気のせいだろうと思って、いつしかそんなことも忘れてしまっていた。
それが、先日のエレン奪還作戦以降ガラリと変わってしまったヒストリアの顔を見て、それを思い出した。
彼女はまるで、無理に付けていた笑顔の仮面が滑り落ちてしまったかのようだった。