第36章 束の間の日常
「意地悪言うなエレン。触りたがってんだ、好きなようにさせてやれ。そしてその場所を俺と変われ」
そこに兵長が唐突に会話に入ってきた。兵長はエレンの横に立つと、そんな事を言ったのだった。
「え!?」
エレンは、そのビー玉のように大きな瞳をさらに見開いて、信じられないといった表情を浮かべて兵長を見下ろした。
でもそれはエレンだけではなくミカサも同じで…、と言うかその場にいた全員が同じように兵長を見つめた。唯一違うのはハンジ分隊長だけで、彼女はお腹を抱えてゲラゲラと笑っていた。
「…というのは、まぁ、冗談だ。ところでお前ら、これはどういう事だ?」
テーブルの裏面に手を差し入れて、兵長は目ざとくホコリの確認をした。
笑いの予感が漂っていた雰囲気はあっという間に消え去り、空気がピリッと張りつめたものへと変わった。
「時間は十分にあったはずだが…」
今度は皆が兵長から見つめられる番で、104期達は青い顔をしてうつむいたのだった。