第1章 入団式
その後は、特に変わった事を言う子もいなくて、皆まるで示し合わせたかのように綺麗なくらい同じ「人類のために心臓を捧げる」という信念を言って、新兵入団式は無事に終了した。
先輩兵士たちがバラバラと講堂を後にしていく中、私たち新兵も整列したまま壇上から降りていった。
私も、隣の子に続いてステージの脇に取り付けられた階段を下りたけれど、なんだかまだ、はっきりと視線を向けられているのを感じた。
視線なんて形のないものなのに、身体にまとわりつくような感覚がはっきりと感じられて、とても嫌な気分だ。
でもこの視線には、訓練兵時代から覚えがある。チラチラとこちらを伺うような、決して真っ直ぐにはこちらを見ない。いつも何かに隠れて見ているような感じで、こちらが目を向ければ、サッとそらしてしまう。
正直、腹が立つ。分厚い布団みたいに覆いかぶさってくるこの視線から、今すぐ逃れたい。
やっぱり、さっきのあの発言が原因なんだろうなぁ…。
でも……、だからって私はテコでも自分を変えることはしない。
そりゃあ、こういう視線を向けられるのは気分のいいものじゃないけど、私は皆に気に入られるためにここにいる訳じゃない。
人にどう見られようが関係ない。私は、自分でやると決めたことをやりに、ここまで来たんだ。
今日やっと、私は一歩踏み出したよ兄さん。
どうか見守っていてね。