第30章 ささやかな代償
それは、ハンジ分隊長の巨人化実証実験の最中の出来事だった。
実験の発案者はリヴァイ兵長で、俺が暴走した時に巨人の体から「殺さずに、半殺しで取り出す」方法を試すために行われる。
「エレン!」
訓練場となる平野に到着した時、俺のもとへと駆け寄ってきた者達がいた。
「ミカサ!アルミン!お前らどうしてここに…」
予想もしていなかった場面での幼馴染達の登場に、俺は嬉しいよりも先に面食らった。
聞けば二人は、俺の身を心配するあまり上官に必死に頼み込んで実験要員として参加させてもらったらしい。
「エレン、実験の内容は聞いた。とても心配…今からでもやめることはできないだろうか…」
「ばかっ、何言ってんだミカサ!そんなこと、許される訳ねぇだろ!」
「でもエレン…大丈夫なの?もしもまた暴走したら、君の身だって危うくなるんだろう?それに、巨人化するのだって、トロスト区防衛戦以来じゃないか」
「そうだな…。だけど、やるしかねぇんだよ。それが、今俺にできることだから」
そう言って視線を少し逸らした時、ミカサの上着の胸ポケットから少しはみ出している白い紙が目に入った。
「ん?なんだ?」
ヒョイっとその紙を抜き取ると、珍しくミカサが慌てたように手を伸ばしてきた。