第29章 第104期調査兵団
皆まだ緊張した面持ちをしているけれど(一人だけ、夢中になって食べている女性兵士がいたが)、次から次へと色々な先輩達が押しかけに行っているので、何だかんだ楽しそうに過ごしている。
懐かしいなぁ。ほんの2年前、私もあの席にああやって座っていたっけ。
「すでに戦場を経験しているからか、皆顔つきが違うよね」
「…そうだな」
ふいにハンジ分隊長が真面目な顔になって言った。返事をした兵長は、相変わらず食事は召し上がっていないが、分隊長と同じくお酒を飲まれている。
「今年の奴らは期待できるかもな」
笑いこそしなかったものの、兵長も明るい表情をしているように見えたのだった。
〇
私達は、次の日の朝早くに古城に帰ることになっていた。歓迎会の後では道が暗くて危険だからだ。
そんな訳で次の日の朝、まだ人のまばらな食堂で一人朝食をとっていると、入口から男性兵士が二人で入ってくるのが見えた。
その姿には見覚えがある。確か、昨日の歓迎会で新兵の席に座っていた子達だ。
何となく彼らの姿を目で追っていると、二人の内の一人、小柄で坊主頭の子と目が合った。
彼はポカンと口を開けて、まるで驚いたように私を見つめた後、隣を歩いている背が高めで面長の子の脇腹を肘でちょいちょいと小突いた。
小突かれた方の彼は最初眉をひそめて「なんだよ?」という顔をしたが、坊主頭の子に促されて私の顔を見るとポカンと口を開けた。
彼らは唐突に肩を組んで後ろを向くと、コソコソと何やら話し始めたのだった。