第26章 兵長のおまじない
「お前らはアイツが巨人の絵を描いているところを見たことはあるか?大体いつもあんな感じだ。今声をかけたって、聞こえちゃいねぇ」
二人は、改めてラウラの姿を見つめた。
先程までの柔和な雰囲気はどこかへ吹き飛んで、狂気すら感じさせるほどの集中力を発揮しているのが、この距離にいても分かるほどだった。
正直、ちょっと怖いと思った。
「…知りませんでした。…でも、ああいう姿を見ると、やっぱり天才なんだなって思います」
「私もそう思います。ラウラさんは、私達みたいな凡人にはできないことを次々と成し遂げた人だから…」
「まぁ、そうだな。アイツは絵に関しては天才だ。それは間違いない。だがな、中身はまだまだガキだ。…だから、なんだ、つまり俺が言いてぇのは、これからもアイツと仲良くしてやってくれってことだ」
照れくさそうに言ったリヴァイの様子に、ヘルゲとミアはギョッとしたのだった。
今のは何だ?!あの厳しいリヴァイ兵長が…まさかこんな事を言うなんて!想像もしていなかった。
「は、はいっ、もちろん!!俺たち、ラウラさんの事、尊敬しているし大好きですからっ」
思わず敬礼してしまった二人に、リヴァイはボリボリと頭を掻いて、きまりが悪そうに舌打ちをしたのだった。