第26章 　兵長のおまじない

　こいつとどうこうなりたい、なんて高望みはしない。いや、正直に言えば願望が無い訳ではないが。コイツの絵の邪魔だけはしたくねぇ。　

　コイツが思う存分絵を描けるように支えてやりたい。俺は、それだけで十分だ。


　そう思っているはずなのに、どうしても俺はついコイツにちょっかいを出してしまう。

　だがまぁ、さっき髪を触った時にも思ったが、ラウラは筋金入りの鈍感のようだし、勘付かれる心配はしなくてよさそうだ。


　そう言えば以前ラウラから、幼馴染の話を聞いたことがある。話を聞く限りでは、おそらくそいつはラウラのことがずっと好きだったんだろう。そして、気付いてもらうためにそれなりに努力もしたようだ。

　だが、ラウラは気付かなかった。

　勘所の悪い奴じゃないし、頭も良い。だが、恋愛ごとになると途端にポンコツになるのは何故なのか。

　下手に俺の気持ちに気づかれて気を使われるのも面倒だが、…気付いて欲しくない訳じゃないんだがな。