第26章 兵長のおまじない
返事をしてすぐに小さな寝息が聞こえてきたので、俺は思わずラウラの顔を覗き込んでしまう。ラウラはもう、ぐっすりと眠っていた。
たった今、横になったばかりだぞ?コイツ、こんなに寝つきが良かったのか。
アトリエで居眠りをしているところや、酒で酔いつぶれているところしか見たことがなかったので、普通に眠りにつく姿なんて見たのは初めてかもしれない。
スースーと小さな寝息を立てるラウラの顔を見ながら、回りに人がいなければ、その滑らかな白い頬を撫でていただろうと思った。人目さえなければ、触れていたのに。
俺はラウラのことが好きだ。多分、初めてコイツに会った時から、この想いを抱き続けている。
あの日、消灯時間も迫った時刻、ラウラは宿舎の待合室で1人絵を描いていた。
あの時コイツは瞬きもせずにボロボロと涙を流しながら、一心不乱に絵を描いていた。それは異様な光景だったが、俺が感じたのはそれだけではなかった。
涙が次々と溢れてくる青い瞳を見て俺は、「宝石みたいに綺麗な目だ」と思ったのだ。
異様な奴だと思ったが、それ以上に美しいと思った。もっとコイツのことを知りたいと思ったのだ。