第24章 あなたの横顔は
そう心配になったから、私は消灯時間を過ぎた頃、ラウラのアトリエへと向かったのだった。
暗い廊下を歩いていくと、突き当たりにあるアトリエの扉は少し開いていて、その隙間からランプの灯りがゆらゆらとこぼれていた。
やはりまだ絵を描いている。
そう思って私はドアノブに手をかけた。だけど中から声が聞こえて、私の手はピタリと止まった。
「おい、こんなところで寝るな。ちゃんとベッドで寝ろ」
部屋の中から聞こえてきたのは、まぎれもなくリヴァイ兵長の声だった。
その瞬間、私の心臓はドクンドクンと大きく脈打ち始めた。
なぜ兵長がこんな時間にラウラのところにいるの?
私は、そっと扉の間から中をうかがった。こんなのぞき見るような真似したくなかったけど、部屋に入っていく勇気が無かった。
扉の隙間から室内を見ると、椅子にもたれて眠るラウラと、その目の前に立つ兵長の姿が見えた。
兵長は、手に持っていた毛布をラウラの身体に巻きつけるようにして掛けていく。そして…ラウラの白い頬をこの上なく優しい手つきでスリと撫でたのだった。
「…今日はよくやったな。おやすみラウラ」
そして名残惜しそうにラウラの髪をサラリと指に絡めて、それからゆっくりと離れていった。
ここから見える兵長の横顔は…とても穏やかに微笑んでいた。
ドク、ドクと脈打つ振動が、胸から全身へと広がっていくのを感じて、こめかみにも脈を強く感じた。頭が痛い。