第23章 成果
「チッ…」
リヴァイが小さく舌打ちをするが、別に怒っている訳ではないことなどエルヴィンには分かっている。
素直になれない奴なのだ。人一倍優しくて、他人への愛に溢れているくせに、それを表現する術を持たない不器用者。
そしてそれは、一人の女性に対する好意に関しても同じことだった。
エルヴィンはリヴァイがラウラに惹かれていることに気がついていた。
もちろん、リヴァイは必死にそれを隠しているようだったが、見ていればすぐに分かる。
(この気難しい男が、いくら任務だからといってここまで甲斐甲斐しく世話をすることなんて有り得ないからな。健気に毎日アトリエに通っているようだし、この間は二人で出かけていたな)
恋路の応援などしたらリヴァイは怒るだろう。だからエルヴィンは心の中でそっと、想いが成就することを願っている。
(お前にもやっと、安らげる場所が見つかったんだな。だが、その道はなかなかに険しいぞ。なにしろ、ラウラはお前以上に不器用だからな)
二人の関係の行方を見守るのも楽しそうだと、エルヴィンは新たな楽しみを見つけたような気がしたのだった。
「てめぇ、何を笑っていやがる。気持ちの悪い奴め…」
微妙に距離を離して歩くリヴァイが、怪訝な表情をしてそれを見つめていた。