第3章 あの日
シガンシナ区の外門を破壊した、今までに例を見ないほど巨大な巨人には、「超大型巨人」という呼び名が付けられた。見たままの名前だったけれど、それ以外に呼びようがない。
あと、ウォール・マリア領へと続く内門を破壊した巨人は、「鎧の巨人」という名前だ。
私と兄は、あの後死に物狂いで逃げて、何とか内門からウォール・マリア領内へと入ると、トロスト区に落ちのびる船へ乗り込んだ。
父が巨人に食われた後、どこをどうやってここまで逃げてきたのか、全く思い出せない。
ただ、兄と繋いでいた手が、骨が粉々になるのではないかと思うほど痛かったことだけは覚えている。
発着所に着いたばかりの船に乗り込んだ私と兄は、船の先端の方に座った。
後から後から、逃げてきた人々が続々と乗り込んでくる。私たちは隅っこの方で身体を寄せ合って、小さくなっていた。
私は両膝を抱えて座っていたけれど、膝を抱く手がまるで痙攣でもしているかのようにブルブルと震えて止まらない。
いや、手だけじゃない。身体全体が震えていて、どうしても止めることができなかった。
「ラウラ、大丈夫か?」
私の様子に気づいた兄が、背中をさすってくれる。私は唇が震えて上手く言葉が出てこなかったから、小さく頷いただけだった。
真横に寄せられた兄の顔を見ると、兄の唇も震えていて、その顔は真っ青だった。