第19章 酒
調査兵団に入団してから早いもので1年が経とうとしていた。私ももう、18歳だ。立派な成人である。
「おーいラウラ!いるかー?」
ノックもほどほどに、勢いよく開かれたアトリエの扉から飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべたゲルガーさんだった。
その後ろから、いつも通り王子様のような微笑みを浮かべたナナバさんもゆったりと部屋へと入ってきた。
突然の来訪者にちょっと驚いて、私は筆を持つ手を思わず止める。
「びっくりした…ハンジさんかと思った…」
思わずこぼした言葉に、ゲルガーさんはため息をついてやれやれといった顔で首をふる。
「おいおい、そりゃねぇぜ。俺とハンジさんを間違えるなんてよぉ」
「ゲルガー、気持ちは分かるけど…確かにさっきの入り方はハンジに似てたよ?」
と、すかさずナナバさんが言う。
「えぇっ?!マジかよ?」
ナナバさんに指摘されて、ちょっと大げさなくらいゲルガーさんはのけぞって驚いてみせた。そのやりとりは傍目から見ていても軽快で、二人の仲の良さが感じられる。
「ところで…」
どうかしたんですか?と彼らの来室の理由を聞く前に、ゲルガーさんがツカツカとすぐそばまで近寄ってきて、ガシッと首に腕を回してきた。
「ラウラ!飲みに行くぞ!」
「えっ?!」
至近距離に来たゲルガーさんの顔は、表情が本当にハンジ分隊長そっくりだった。分隊長がよく見せる、面白いことを思いついてはしゃいでいる子どもみたいな顔で、その瞳はキラキラと輝いている。
「お前、やっと18歳になったんだろ?ついてこい、俺が酒の味を教えてやる!」
返事をすることも、ましてや画材道具の片付けをする間もなく、ほとんど引きずられるようにして私はゲルガーさんに連れ出されたのだった。もちろん、ナナバさんも一緒に。