第18章 似顔絵
絵の整理も終わり日も暮れてきたので、私は夕食をとるためにアトリエを後にした。
食堂には大勢の兵士たちが夕食を食べに来ていて、ガヤガヤと騒がしかった。
私は配食当番の兵士からスープとパンを受け取ると、食堂のはじっこの席に座って食べ始めた。
ナナバさんたちと食べることもあるけれど、大抵は一人でパパッと食べてしまうことが多い。
ふと、賑やかに話す声が聞こえてきて、声のしてくる方に目をやると、そこには同期たちが集まって夕食を食べていた。
ワイワイと楽しそうに話している様子に、私は思わずそれを見つめてしまう。
「楽しそうだな…」
訓練兵時代、私はああいう風に仲間たちと楽しく食事をしたことなんて一度もなかった。
誘われることも無かったし、あえて自分から皆の輪の中に飛び込んでいくこともしなかった。
だって入っていっても一体何を話せばいいのか分からないし、自分が明らかに浮いた存在だということは自覚していたから。
…なんて言い訳ばかりしているけど、結局私は、皆に声をかける勇気が無かっただけだ。
ヒソヒソと噂話をされていることで完全に逃げ腰になってしまっていて、自分からみんなに話しかけることを恐れていた。
きっと皆だって私に話しかけられたくないはずだ。…なんて、面と向かって言われた訳でもないのに勝手に卑屈になって縮こまっていた。
そう思ってしまうのは悪い癖だと分かってはいるのだけれど。…悪い癖ほど、治すのは大変なのかもしれない。
楽しそうに話しながら食事をしている同期たちを見ていた時、ふと、ハンジ分隊長に言われたある言葉を思い出した。
「そういえば…前にハンジ分隊長が、同期たちが私の絵を見たがっているとかって言っていたような。でも…そんなまさか、だよね」
そればっかりは分隊長の勘違いだと思う。だってそんな素振り、今までに少しだって見たことはないのだから。
私は手に持っていたパンをガツガツと勢いよく口に詰め込んでスープで流し込むと、食べ終えた食器を持って席を後にしたのだった。