第17章 巨人捕獲作戦
「おい、言いたいことがあるのならハッキリ言え。ボソボソしゃべってんじゃねぇ」
俺が目の前に来た時点でそいつらの表情は固くなっていたが、そう言った後は、まさに顔面蒼白といった感じで色を失った。
「いえっ、な、なにも…」
「あ?」
ジロと、もう一度睨みをきかせれば、そいつらは観念したように話し始めた。
「自分たちは…ラウラさんの同期なのですが、彼女の才能には同期一同本当に憧れていて、尊敬しているんです。だから今回も、勇敢にも囮役を果たし、巨人に怯えることもなく絵を描いていらっしゃる姿を見て感激していたというか…」
「私も、ラウラさんのことを尊敬していて…でも、いつも難しい顔をしていらっしゃるから、どうしても直接話しかけ辛くて…。だからこんな話し方をしてしまいました。申し訳ありません!」
「……」
目を伏せて、小鹿のようにプルプルと震えている男性兵士と、ラウラとたいして体格の変わらなそうな小柄な女性兵士が話し始めたのは、俺が想像していたのとは全く違うものだった。
てっきり悪口のたぐいのことを話しているのかと思ったのだが。
「お前ら、名前は」
俺は少し興味がわいて、そいつらに尋ねた。
「はっ、自分はヘルゲ・ギュンターでありますっ」
「自分は、ミア・シュミットですっ」
ばっ、と敬礼をした二人を見てから、肩に担ぎ上げたラウラのことをチラリと見やったが、相変わらず俺の背中を机代わりにして、ガリガリと絵を描いていやがる。
「ラウラよ、お前はその悪癖をどうにかした方がいい」
こんなに嬉しいことを言ってくれているのを聞き逃しちまったんだからな、と俺は心の中で思って、兵舎へ向かって再び歩き始めたのだった。