第17章 巨人捕獲作戦
イルゼ・ラングナーの手記の内容は、ハンジ分隊長によってエルヴィン団長へと詳細に報告されたのだった。巨人捕獲作戦の企画書も添えられて。
それから数日後、私たち巨人研究班の面々はハンジ分隊長によって研究室へと集められていた。
研究室の大きなテーブルについた私たちの横を、カツカツとハンジ分隊長が歩いてゆく。
うつむき加減の顔は、まるでたった今嵐が通り過ぎていったかのように乱れた髪の毛で隠れているので見ることはできない。
ハンジ分隊長はテーブルの正面に立つと、ガバッと唐突に顔を上げた。その顔には、子どものような笑みが浮かんでいた。
「エルヴィンからの許可をやっと取り付けたよ!巨人の捕獲作戦、決行だーっ!!」
ほとんど咆哮のような声を上げて、分隊長は喜びを全身から発散させるみたいにして両の拳を高く突き上げた。
キラキラと輝く大きな瞳は、あっけに取られている私たち研究班の面々を見つめている。
「やりましたね!分隊長っ!」
一瞬の間の後、いち早く声を上げたのは巨人研究班の一員であるニファさんだった。彼女は小柄でとても可愛らしい容姿をしているが、兵士としての能力は高い。
「おぉ!!これで一歩前に進めますね!」
続いて、興奮気味に声を上げたのはケイジさんだ。彼は鋭い目つきと、綺麗に刈り上げられた坊主頭が特徴的な中堅兵士で、彼もまた研究班の一員である。
「これからまた忙しくなりますねぇ」
ヒゲゴーグルさんの言った一言に、私たちは皆、胸の奥からじわじわとやる気が溢れ出してくるような気がして、まるで示し合わせたかのようにこっくりと大きく頷いたのだった。
ちなみに「ヒゲゴーグル」というのはあだ名で、なぜか皆、彼のことをそう呼んでいる。私は、さすがに先輩のことをあだ名で呼ぶ訳にはいかないと思って最初は名前で呼んでいたのだけれど、彼の方から、
「堅苦しいから、ヒゲゴーグルでいいよ。自分でも意外と気に入ってんだ、このあだ名」
と明るく言ってくれたので、以来そう呼ばせてもらっている。
「さーてとぉ!バリバリ働くぞぉ!」
ハンジ分隊長が大きな声で言う姿を、モブリット副長はいつも通り傍らに立って笑顔で見つめていた。