第16章 尊敬
前回の壁外調査の後始末がやっと終わったかと思っていたら、あっという間に次の壁外調査の決行日が決まった。
正確に頻度は決められていないものの、壁外調査は比較的定期的に行われる。
もちろん、その時の兵団の支持率…つまりは懐具合によるのだが。
調査兵団の活動資金の大部分は、裕福な貴族達からの出資金で賄われている。出資者からの賛同を得られなければ、活動の資金を捻出することはできない。
調査兵団の支持団体から出資金を集めてくるのは、エルヴィン団長をはじめとした幹部クラスの兵士たちだ。
彼らは日夜、内地に赴いては兵団の活動の有用性について説いて回っている。
言い方は悪いが、貴族のご機嫌取りのようなことも、必要に迫られればやらなければいけないのだ。
そのメンバーの中には当然リヴァイ兵長も含まれているのだけれど、常に眉間にシワを寄せている兵長が、一体どんな顔をしながら貴族たちとのお茶会を過ごしているのか…全く想像ができなかった。
怖いもの見たさで、ちょっと知りたいような気もするけど…。
〇
「今回もいつも通り、兵站拠点作りを主目的とした遠征となる。各自、作戦企画紙にはよく目を通しておくように」
そう言って研究室の雑然とした机の上に作戦企画紙を広げたのは、ここ数日寝ておらず、目の下を黒くしたハンジ分隊長だった。
巨人研究班、通称ハンジ班に配属された私の直属の上司はハンジ分隊長である。
固定の班に所属したことにより、今後ナナバさんと同じ班になれる可能性が限りなく低くなってしまったことが残念だったけれど、そんな甘ったれたことも言っていられない。
私はこの班でたくさんの事を学び、そして巨人の絵をたくさん描いていかなければならないのだから。