第15章 見えている世界
新兵である私には、掃除、洗濯、炊事…など数々の雑用があるが、それさえ終わってしまえば、後の時間をどう使うかは割と各兵士に委ねられている。
次の壁外調査に向けて自主訓練をしてもいいし、作戦誤認を防ぐために座学のおさらいをしてもいい。
過ごし方は人それぞれだ。
私ももちろん自主訓練や座学のおさらいをした方がいいのだが、ハンジさんから依頼された絵もたくさんあるので、いつも早々に自主訓練を切り上げてアトリエにやって来ては、絵に没頭する毎日を過ごしていた。
今日も、15時過ぎには雑用も終わったので、私はアトリエに来て絵を描いていた。
相変わらず…という言い方も失礼だが、リヴァイ兵長もいらっしゃっている。
兵長専用のコーナーを設けて、小さなティーテーブルと椅子を用意したので、大体いつもそこに座られて読書をしたり、私が過去に描いたスケッチブックをパラパラと見たりして過ごされていた。
コンコン、と部屋の扉がノックされて、カチャリと開いた扉の間からナナバさんが顔を覗かせる。
「ラウラ、少し絵を見ていってもいいかい?」
「ナナバさん!どうぞどうぞ!少し油臭いですけど」
ナナバさんの来訪に私は嬉しくなって駆け寄ると、余っている椅子を引っ張ってきて彼女に勧めた。
立ち上がったついでに、もう一つの窓も大きく開け放つ。この部屋は角部屋なので、部屋の二面に窓があって、両方とも開ければそれなりに風が通って気持ちがいい。
ちなみに兵長がいつも座っているのは、ナナバさんがいるのとは別の窓際だ。
「あれ?リヴァイも来ていたんだ。君が絵に興味を持っているとは知らなかったよ」
私の勧めた椅子に腰掛けながらナナバさんが言う。
そして、兵長の座っている椅子や、慣れた手つきでスケッチブックをめくっている様子を見て、少し首を傾げた。
「もしかして常連かい?」
そう言って私の顔を見上げてきたナナバさんは、心なしか笑っていた。