第3章 二人の主君
図らずも私を受けとめる結果となった政宗殿はそのまま馬から落ち、彼の背中は私の代わりに地面に叩きつけられた。
おかげで、その上に乗りかかるように被さってしまった私は無傷だが。
「すまない政宗殿! 平気か!?」
「・・・なんでアンタが空から降ってきたんだが皆目見当もつかねぇが・・・とりあえず俺の上から退きやがれ」
「そ、そうだな! 今すぐ!」
政宗殿に襲いかかったような体勢からすぐに直り、慌てて体を起こした。
続いてさすがに痛そうに体を起こす政宗殿。
立ち上がらずに片膝を立てて地面に座ったまま、私を睨んできた。
「・・・頭の上から襲ってきやがる奴がいると思ったら、アンタだったとはな。刀構えて待ってたが、気づいたときはさすがに斬らねーでおいたぜ」
「・・・す、すまない。恩に着る。お前のもとへ飛んでいくはずだったのだが、落ちてしまった」
私がそう言うと、何が面白かったのか、政宗殿はニヤリと笑った。
「俺んとこへ飛んでいく、ねぇ・・・・なかなか粋なこと言うじゃねーか」
「!?・・・へ、変なことを言うな!」
「・・・なんで来た?」
すぐに真剣な顔に戻った。
鋭い表情。
やはりここへ来て良かった。
この人は一人で多くのものを抱えて走っていたのだ。
私もそれを分かち合いたい。
「・・・片倉殿はじめ、伊達軍はお前を追ってきている。幸村様もお館様ご危篤の中、織田を倒すため追って出陣した。・・・私も同じだ」
「答えになってねぇな。真田幸村についてくって豪語してたじゃねぇか。それがなんで空飛んで俺の頭に落ちてくんだ?」
なんだコイツ、根に持っているのか。
あれから色々考えて、やっとコイツの側に来る気になったのに。
「・・・い、今は・・・お前が私の主君だからな・・・」
自分でも言ってることが二転三転しているのは分かってる。
それでもあまりほじくりかえさないでほしい。