第3章 二人の主君
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この晴れた空の下、今がどんな世であれ、きっと空を飛べば気持ちがいい。
そう思うだろう。
・・・しかしそうもいかなかった。
「きゃ────! 止まれ止まれ止まれ────!」
飛行忍具は確かにその名のとおり空を飛んでいる。
しかしこんな大きな凧がついているというのに、それは左右に大きく揺れており、当然ぶら下がっている私も気持ち悪いほどに揺さぶられた。
凧の後ろに爆竹が付けられていて、その衝撃で前へと進む速さはすごいものである。
もうどれくらい煽られているだろう、あっという間に甲斐は見えなくなったがこれではまともに尾張に着けるかどうか・・・。
「せっかく取り置いていたというのに、よりによってこんなお粗末だとはっ・・・! 佐助様に文句を言っておかねばっ・・・」
喋っていると舌を噛みそうだ。
ぐるぐると目を回されたせいで、今どこを飛んでいるのかも分からない。
「・・・あっ・・・!」
そんな中、目の端のほうで、蒼い背中を捉えた。
この森の中を一人で馬に乗り駆けている。
木々に隠されては見え、また隠されては見える。
見覚えのある、ずっと側にあった背中。
間違いないっ・・・!
「政宗殿っ・・・!!」