第3章 二人の主君
────その夜、真田幸村は夢を見た。
自身の不安にまみれた心の中のように、霧のたちこめる世界。
何処までいっても真っ黒な、出口のない閉ざされた空間にポツリと一人佇んでいる夢である。
『・・・ここは、どこなのであろう・・・』
ただ自分だけがいるこの空間は、まるで今の状況そのものだと思った。
いつも信玄についていけばよかったのに、その光を失った途端、こうして心は闇に落ちてしまうのだ。
『・・・幸村よ。』
そこに、ぽっかりと光がさして、待ち望んでいた人物が現れた。
『お館様!』
『幸村。なんだ貴様の情けない決意は』
厳しい言葉も、いつも糧としていたもの。
でも今の幸村には辛くのし掛かった。
『お館様・・・某、お館様がいなければ、どうしていいか分かりませぬ。魔王を討ち果すことも大事、しかし、今お館様の身に万一のことあらばっ・・・』
『馬鹿者!』
夢の中でも殴られ、弧を描いて飛ばされていく幸村。