第3章 二人の主君
「お前ぇら! 何葬式みてぇな面してやがる! 俺たちも尾張に行くぞ!」
片倉殿は、私との話が終わると突然庭先に出て、背中を丸めていた兵たちに向かってそう叫んだ。
もしや片倉殿は、これも政宗殿の意思だと分かっているのだろうか。
あの殺戮集団を相手に、もはや武士と武士の戦ではないのに、それでも誰の闘志も揺らがない。
各々が信念を抱いて、尾張に向かおうというのだろう。
・・・全部、政宗殿が先にいるから、だから皆そう思うんだ。
・・・・私も、そうだ。
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伊達軍は片倉殿を先頭に、全員が甲斐を発った。
武田軍は幸村様が動き出さずにいるので、皆がこの城で足を留めている状態。
それでも私は幸村様を待っているつもりだ。
お館様がご危篤の事実を、幸村様の中で受けとめきれるまで、ずっと。
お館様。
目を覚まして下さい。
幸村様は、あなたのお帰りを待っています。