• テキストサイズ

【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第3章 二人の主君




──────



政宗殿は尾張へ発った。


しかし予想外にも、彼は一人で出ていった。

伊達の兵たち、そして片倉殿でさえも置いていったというのだ。

置いていかれた兵たちは項垂れていたが、片倉殿だけは違った。

全てを理解しているようで、闘士が尽きてはいない。


「・・・片倉殿。政宗殿はなぜ兵たちを置いていったんだ?」

「政宗様は、魔王を一人の武人として認めなかった。ただの殺戮者を相手に、こいつらを引き連れて正々堂々戦うことはできねぇのさ」


さすがは片倉殿だ。

政宗殿の気持ちが手に取るように分かるのだろう。

己の主君を信じているから、何時なんどきもその決意に動じることはない。

彼は感心する私をのぞきこむと、ため息をついた。


「・・・紫乃。さっき政宗様に言ってたことは本気か?」

「・・・」


ギュ、と唇を噛んだ。

本気、のはずなのだ。

政宗殿にはもう、行動を共にすることはない。

あの蒼い背中を追いかけることはない。


「・・・本気だ。」

「・・・そうか。紫乃。政宗様は、お前ぇを大事に思っていた」


──やめろ。

今そんなこと言うな。


「・・・はは、片倉殿、何を言って・・・」

「嘘じゃねぇ。お前ぇの伊達に対する強い信念に惚れ込んでたんだ。・・・でも、それが偽りだったってんなら、もう政宗様の前には現れんじゃねぇ」


─ズキン─


「・・・安心しろ。そのつもりだ片倉殿」


私もだ。

アイツの側にいる間、アイツの考えること、やること、全てに感動していた。

全てに惚れ込んでいた。

口では反抗していたけれど、本気で敬っていた。

あのときは、たしかにアイツが、私の主君だったのだ。

それが終わりになるということは、本来の主君である幸村様のお側にいられるということなのに。

それなのに、どうして私は、こんなにもアイツの顔ばかり思い出すんだ。

今も一人で魔王の懐に飛び込もうとしている。

──私は一緒には行けないのに。


/ 147ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp