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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第3章 二人の主君






「・・・ハッ、アンタもお山の大将が倒れちまってビビってんのか」


政宗殿は私の態度が心底気に入らない様子で、腕を組んでこちらをギロリと睨んだ。

それでも、私の決意は固い。

政宗殿を振り切るための言葉を必死に選んだ。


「政宗殿。もとより、私はお館様の命を受けてお前のもとに留まっていた。その目的は織田を包囲するために伊達の動きを知ること」

「んなこたぁとっくに分かってんだよ!」

「なら、なおのこと私はもうお前の側にいる理由はない。織田包囲網なくお前が尾張に乗り込むというのなら、私が伊達に付いて回る意味など無いだろう」

「・・・・そうかよ、じゃああれか。伊達軍に入る覚悟だの、伊達の流儀に従うだの、ありゃ全部詭弁だったってわけかよ! ・・・ハッ、聞いて呆れるぜ。アンタはその程度か!」


─ズキン─


・・・どうして。

どうしてこんなに心が痛いんだ。

政宗殿に失望されることが、こんなに辛いと感じるなんて。


「・・・何とでも言え。私は武田の忍だ。お館様、そして幸村様。それ以上に優先すべきものなど・・・ありはしない」

「・・・・勝手にしやがれっ・・・」


政宗殿はギリギリと歯を鳴らし、乱暴に襖を開けきると、それ以上私を振り返ることなく出ていった。

それに続く片倉殿は、寂しげな目で、一度だけ私を振り返る。

・・・私には、その目に応える資格はなかった。


「あーあ紫乃、竜の旦那怒らせちゃって大丈夫なの?」

「佐助様。言ったとおりです。私は幸村様のお側にいます。・・・政宗殿にどう思われようと、もう任務は終わったのですから」

「そりゃそうだけどさぁ・・・」


後悔などしていない。

もとより政宗殿と私には、何の関係もなかったのだ。

お館様の命を受けて付き従っていただけのこと。

この心の痛みも、きっとすぐに止む。


「・・・紫乃・・・」


幸村様は不安そうに私を見ている。


「幸村様。私は幸村様の決めた道に、ついていきます。」


私が守るのは、この背中だ。


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