第3章 二人の主君
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お館様と幸村様は、総出で岸へと引っ張りあげられ、すぐに城へと運ばれた。
しばらくして幸村様は目を覚まされたが、大量の血を失ったお館様は目を覚まさないまま、この広間に横たわっている。
幸村様はずっと、俯いてお館様のお側にいた。
「・・・明智の野郎、堤を壊して甲斐の虎の注意を逸らし隙を突くなんざ、武士の風上にも置けねぇ」
片倉殿も悔しそうに、お館様を見やる。
明智は政宗殿たちと交戦したあと、さっさと逃げていったのだという。
甲斐の大将・お館様の危機とあって、広間には政宗殿と片倉殿、幸村様と佐助様が集まっていた。
お館様がお目覚めにならない今、ここにいる者で今後のことを決めねばならない。
・・・でも私は、これからのことよりも、後悔ばかりを感じていた。
─『政宗殿!ここにいては危険かもしれぬ!佐助様に守りをつけてもらおう!こちらへ来い!』─
政宗殿には、ああ言った。
それなのに、堤で頑張っておられたお館様と幸村様には、何ができた?
何のお役に立った?
私は忍失格だ。
主君が誰であるのかを錯覚し、こうして危険な目に合わせた。
一度思い直す機会もあったはずなのに、私はそれでも改めることができなかったのだ。