第3章 二人の主君
政宗殿と片倉殿は、明智を追って橋の方向へと見えなくなっていった。
もしかしたらもう今ごろ、近くに潜んでいた明智光秀と交戦しているのかもしれない。
──でも、そんなこと、今の私にはどうでもよかった。
「幸村様!!幸村様ぁ!!」
お館様を追って川の奥深くまで沈んでいった幸村様が、上がってこない。
もうどれくらい経ったのだろう、息が止まってしまう。
皆の抑えもむなしく半壊している堤防からは、その内側へ激しい濁流が流れ込んできていた。
幸村様は、この水の中へ迷わず飛び込んでいったのかと思うと・・・。
・・・私は、どうして同じようにできないのか。
私もお館様を、そして幸村様を追ってこの渦の中へと飛び込むべきなのに。
「幸村様ぁ!」
この安全な岸の上でこうして、主君の名を呼び続けるしかできないなんて・・・。
・・・いや、行こう。
例え私の命が無くなっても、お館様、そして幸村様のお命が無くなることは耐えられない。
私は深呼吸をして、激流の中心を睨んだ。