第3章 二人の主君
堤を抑えていた吉直の言葉に、私は頭が真っ白になった。
「チッ、やっぱりあの腐れ野郎の仕業だったってわけかよっ・・・。おい小十郎! 行くぞ!」
「はいっ!」
お館様・・・
お館様・・・
嘘だ。なんでっ・・・
「お館様!! 幸村様ぁ!!」
沈んでいったお館様を、幸村様は追っていかれたのだ。
・・・吉直に聞けば、お館様は首もとに大きな鎌の刺し傷をつけられ、すぐにその意識を手放したらしい。
幸村様もこの濁流の中に入られた。
お二人が危ないっ・・・。
「お館さまぁぁあああ!!!」
予想していなかった。
私は何をしていたんだろう。
お館様や幸村様の身に、何か合ってからでは遅かったのに。
──そう、分かっていたはずなのに。