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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ





──月を見ていると、頭が冷えてきた。

思えば、私に忍としての尊厳があるように、あの二人も軍を率いる責任と尊厳を持っている。

その尊厳がぶつかり合うことは当然のことだ。

ここは私が折れて、任務のためにもう一度話をするべきだろう。

・・・問題は、あちらがもう一度取り合ってくれるかどうかだ。


「・・・寒い」


奥州の夜風は冷たく、身体は芯から冷えていた。

寒さで足の力が失われてきて、私は木から降りて隣接する畑の方へと身を寄せる。

こんな場所で一晩過ごさなければならないのは苦でしかないが、今はそうするより他はないのだ。

ああ、でも、他国の領地でこのまま眠るわけにも・・・


「・・・まだそんなところにいやがったのか」


──え。

気配に気付かなかった。

背後にやってきたのは、先ほど私を追い出した片倉小十郎だった。


「・・・いや、その・・・」

「粘っても無駄だ。早いとこ荷物を纏めて帰るんだな」


なぜ片倉小十郎がこんな夜更けにこんなところへ・・・。

しかし、その瞳は昼よりも少しだけ、優しく揺れていた。


「・・・帰れない。お館様の任務を全うするまでは」


何を言っても無駄だということは分かっている。

だから私は私に言い聞かせるように、そう呟いた。


「・・・甲斐の虎は変わりねえか?」


すると片倉小十郎は、畑から伸びている葉に触れながら、そう言った。


「お館様も幸村様も、小田原を手中に収め、さらに勢いをつけておられる」

「そうだったな」

「・・・お館様は織田が天下を取ることを何としても阻止したいのだ。・・・それは武田のためだけじゃない」

「あいにくだな。俺を説き伏せようとしても無駄だ」


私が武田の人間であることは信じてくれたようだが、片倉小十郎にいくら話をしたところで、結局決断するのは独眼竜なのだろう。

私も何かを期待してここにいるわけではないけれど。


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