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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ




独眼竜・伊達政宗。

あまりに幸村様とは違っている。

情に溢れ、立場関係なく誰にでも真っ直ぐなお心を持っている幸村様。

それに比べてこの伊達政宗、なんて失礼な奴なんだ。


「悪いことは言わねえ。甲斐に帰って飯でも炊いてな」


ブチッ

嘲笑うように言った独眼竜のその言葉に、私の堪忍袋の緒はついに切れた。


「ふざけるな・・・」

「あ?」

「独眼竜!お前など、幸村様にかかればすぐにこの奥州の地に這いつくばり、我ら武田の肥やしとなるに決まっている!」

「テメェ! 奥州筆頭に向かってなんて口をききやがる!」

ついに片倉小十郎がどなり声をあげて刀に手をかけた。

この男のことは甘く見てはいけないと佐助様が言っていた。

独眼竜が全幅の信頼を置いている男。

それでも私は収まらない!


「やれるものならやってみろ! 幸村様のお手を煩わすまでもない! 私がお相手致す!」


しかし、いざ私が構えをとっても、二人は構えようとしなかった。


「・・・やめときな嬢ちゃん。俺はアンタみたいなのとやり合う趣味はねえ。さっさとここから出てくこったな」

「なっ・・・私は嬢ちゃんではない!幸村様をずっとお側でお守りして・・・」

「おい、聞こえねえのか。政宗様は、甲斐に帰れと言っている」



──ほどなくして、私は城を追い出された。

何ということだ。

私は何をしでかしてしまったのだろう。

頭に血がのぼって、つい・・・。

これでは本末転倒だ。

もう伊達との同盟を形にすることなどできない。

・・・でも、甲斐に戻ることは、もっとできない。

何をやっていたんだと失望される。

一時の己の感情を制御できずにお館様の策を潰すなど、忍として失格だ。

どこにも帰れない。


奥州の空に月が昇っても、私は城から離れることはでなきなかった。

その光は、あの独眼竜の目に、少し似ていた。


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