第3章 二人の主君
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川の合流地点が見えてくると、お館様や武田の兵、駆けつけてくれた伊達の兵たちの声と、この雨で今にも堤を破ろうとする川の濁流の音が渦巻いていた。
堤には無数の切り傷のような穴が空いており、皆そこに岩や木材を押さえつけるようにしてこの雨を乗り切ろうとしている。
・・・さすがに堤を抑えることに参加すれば、完全には治癒していないこの手首が悲鳴をあげるだろう。
私は木材を運ぶことに目的を切り換え、里の方に降りていった。
──すると、城の方から、政宗殿と片倉殿がやってくるのが見えた。
・・・まさか政宗殿、この堤の修復を手伝ってくれるのだろうか?
いや、ありがたいのだが、彼の腹の傷は、万が一にもこの水に飲まれでもしたら開いてしまうかもしれない。
「政宗殿! 片倉殿!」
「よぉ。あれが竜王の堤か。アンタは城で茶でもすすってな。あんなもんに加わったら、手首がまたポッキリいっちまうぜ」
「政宗殿だってそうだろう! 幸村様が頑張って塞き止めてくださっている。駆けつけてくれたのは嬉しいが、無理をしてはだめだ」
しかし、二人は堤のそばで様子をうかがうと、その周囲を睨むように観察し始めた。
「・・・? どうしたのだ二人とも」
すると今度は片倉殿が険しい表情で答えた。