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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第3章 二人の主君




「オイ、聞いてんのか」

「・・・・な、なんでもない・・・」


顔を青くしたまま歯切れが悪くなった私に、政宗殿は首をかしげた。

対して私の頭は混乱していた。

おかしい。

謙信殿が討たれたことで、次は甲斐と奥州も危うくなった。

・・・本来なら私は、すぐにお館様の身を案じねばなぬはずなのに。

それなのに、真っ先に頭をよぎったのは、政宗殿のことだった。

このような事態になり、私は政宗殿に同行する今の任務よりも、お館様や幸村様をお守りすることを考えなければならないのに。

─それなのに。

なぜ私は、政宗殿のことばかり考えているのだ。

これでは本当に伊達の忍のようではないか。


こんなことではいけない。

いくら伊達に対して情があるとはいえ、私は武田の人間なのだ。

今はお館様の御身を一番に考えなければ。


「よいか紫乃。己の主君はいつ狙われてもおかしくないと心得よ」

「はい!」


・・・己の主君。

お主にとってそれはだれか、と。

じっと私を見据えるお館様は、私にそう言っているように思えた。

まるでこの心を見透かされているように。


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