第2章 伊達の流儀
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昨晩、城へ戻ってくるなり、良直たち四人は私に飛び付いて、泣きながら安堵の言葉をかけてきた。
そのおかげか少しだけ私の心は晴れたけれど、それでもまだ一夜明けても痛む体に、屈辱は消えずにいた。
もう、こんなことは忘れて終わりにしたいのに。
それなのに、私はどんなに励もうと、いつかまたあんな風に男に弄ばれることがあるのかもしれないと思うと、今ここに自分が在る意味さえも揺らいでいた。
こんなことは誰にも話せず、誰かに助言を乞うこともできない。
唯一事情を知っている片倉殿にも、あんな恥態はもう彼の記憶から葬りさってもらいたいくらいだ。
──私はお舘様にも戻ったことを報告に行った。
しかし、行かねばならぬのにまだ行っていないところがある。
独眼竜のところだ。
聞けば、最初に私を助けに出陣しようとしたのは、独眼竜なのだという。
私を見捨てずに、伊達軍の一員だと言ってくれた。
今の私には、少なくともその事実が支えとなっている。
心から礼を言わなくては。
私は少しの照れ臭さを感じつつも、気を引き締めて広間の戸を開けた。
「独眼竜。失礼するぞ。」
「よぉ、しぶとく生き残ったみてぇだな」
いつもと変わらぬ独眼竜。
なぜかそれが嬉しかった。
私の中で何かが変わってしまった気がしても、彼は何も変わらない。
変わらない精神で、いつもそこにあり続ける。
「その・・・此度のこと、礼を言いに来た」
「・・・あぁ? 何のことだ」
「私を救いだしてくれて・・・その・・・本当に・・・」
「お前を助けたのは小十郎だろ」