第2章 伊達の流儀
─────
「どうしたの旦那。紫乃は無事だったってのに、浮かない顔して」
佐助が幸村にそう語りかけると、幸村はさらに表情を曇らせた。
昨晩の紫乃が松永に捕らわれた事件から一夜明け、晴れ晴れとした朝がやってきていた。
それでも幸村は、昨日から元気のない紫乃の様子に心を痛めたままでいる。
「紫乃は昨晩のことを、某には何も話そうとしないのだ・・・」
「え? どういうこと?」
「某には、紫乃がいつも通りとは思えぬ。おそらく、松永久秀に何か酷い仕打ちを受けたのではないかと・・・。片倉殿は何があったのか知っておられる様子なのだが、聞いても『何もない』の一点張りで、どうにも要領を得ぬ・・・」
佐助は、少し考えたあと、ハッと気づいたように目を細めた。
「・・・旦那、それ、紫乃が話したくないって言ってるの?」
「そうだ。しかし某は、紫乃とは共に辛さや苦難を分け合いたいのだ。できることなら、某にも話してほしい」
「・・・なるほどね。でも旦那、話せないことだってある。それは大切な相手だからこそ知られたくない、そんな気持ちだってあるんだよ。・・・分かってあげなよ、旦那」
「佐助・・・・」
余計に話が分からなくなってしまった幸村だが、佐助の言いたいことも理解はしたようだ。
紫乃が話したくないと言っているのには意味があるのだと。
そして、それなら、もうこれ以上追求してはならない、と。