第2章 伊達の流儀
「紫乃? どうしたのだ?」
嫌だ。
知られたくない。
幸村様にだけは、絶対に知られたくない。
「・・・っ・・・自分で、歩けます・・・」
そう言って幸村様の腕を拒絶して、自分の足で立ち上がる。
何を動かしても鈍い痛みが付きまとったが、私はそれを押し込めて大地を踏みしめた。
「・・・紫乃、俺の馬に乗れ」
「・・・片倉殿・・・」
私は大人しく片倉殿の馬に乗った。
「・・・紫乃?」
幸村様は寂しそうに理由を尋ねてきたけれど、私はそれに答えることはできなかった。
ごめんなさい、幸村様。
今は、何も考えたくないのです。
無理矢理にでも笑顔を見せるべきなのでしょうが、その度に、この体が痛む度に、私はどうしようもなく絶望に突き落とされるのです。
知られたくない。
共に育ち、共に励んだ幸村様には。
私はこんなにも簡単に、尊厳を踏みにじられるのだと。
──片倉殿は、何も言わなかった。
私の体を労るように、優しく包みこむだけで。
でも、それさえも悔しくて、私は涙が出そうになった。