第2章 伊達の流儀
「・・・片倉殿。恩に着る。」
隣に立っている片倉殿に改めて礼を言うと、彼は何も言わずに六爪を拾い集め始めた。
何もかも、無事だった。
六爪も、また独眼竜の手元に戻る。
・・・・いや、ちがうっ・・・・
何も失ってなどいないなんて、嘘だ。
私には、たしかに、この屈辱が残っている。
「・・・紫乃。大丈夫か?」
悔しい。悔しい。悔しい。
どうしてこんなに、痛いのだ。
奴にこじ開けられたこの体が、奴が死んだにもかかわらず痛みを宿している。
「・・・紫乃、斬られたのか? 血が・・・。
・・・────!?」
「見るなっ・・・片倉殿っ・・・・頼む、私を見ないでくれっ・・・」
血が、滴り落ちていく。
切り傷などではない。
奴の触れた場所が、どうしようもなく痛くて、痛くて、悔しくて。
足を滴り落ちていく血がどこから流れ出しているのか、それに気づいた片倉殿は、私から目を背けた。
「・・・紫乃っ・・・」
立て直したはずの感情は、この体に残る痛みにいとも簡単に崩された。
私が女を辱しめられたということが、この体に残っているのだから。