第2章 伊達の流儀
「紫乃!!!」
すると、体内の毒を消し去った片倉殿が、私に迫っていた松永の背中に、大きく刀を降り下ろした。
「・・・・ぐっ・・・」
「松永! 紫乃は、血に汚れたテメェの手が、簡単に触れていい女じゃねぇんだ!」
大きな血しぶきがたったあと、松永の体は吹き飛ばされ、屋敷奥の壁へと打ち付けられた。
その体はもう動かず、笑みを浮かべつつも目は伏せられたまま。
・・・もう、終わりだ。
この男は、慈悲をかけて生かす価値などない。
するとその男は、そのまま夜空を見上げて言った。
「・・・今宵は月が満ちている。この体が朽ちゆくとともに、無情のごとき炎は全てを無に還すだろう。
全てのものは廃れ、亡び、朽ちていく。私もここに朽ちようではないか。卿らに何も残さぬように・・・」
その瞬間、屋敷は炎に包まれた。
この炎の中で、松永は朽ちていくのだろう。
この男の尊厳など、無に還ってしまえばいい。
形など残さず燃え尽きて、私に残したこの屈辱も、消え去ってくれ。
燃えさかる炎を、私たちは立ち尽くして見ていた。