第2章 伊達の流儀
飛び刀を抜き、片倉殿に相対していた松永に背後から襲いかかると、その背中に大きく刀傷をつけてやった。
初めて私に対して腹が立ったように眉をひそめた松永を見て、私は一矢報いることができたのだと実感した。
「片倉殿! 大丈夫か!」
「くっ・・・」
片倉殿は体に毒が回っているのか、ついに膝から崩れ落ちてしまう。
代わりに私は飛び刀で距離をとったまま松永へ攻撃を続け、毒消しの煙幕を片倉殿に向けて放った。
「片倉殿、大きく息を吸って毒を消せ!」
「わかったっ・・・」
飛び刀での威嚇は長くは続かない。
松永はこの刀の軌道を早くも把握し、軽々と避け始めたのだ。
「私は君が尊厳を失い、私の手に堕ち、朽ちていくさまを見たかった。・・・しおらしく私を受け入れようとした君がここまでの気力を取り戻してしまうとは、実につまらぬ宴だ。」
「うるさいっ!黙れ!」
刀を避けながらこちらへ距離を詰めてくる松永に、私は容赦なく攻撃を続ける。
ところが軌道を読みきった松永は自身の刀でその軌道を振り払うと、開けた私までの間合いを一気に詰めた。
「っ・・・」
「大人しく私に手折られていれば・・・花瓶にさして飾ってやったものを」
目鼻がつきそうな至近距離でニヤリと笑う松永に、私は先程まで植え付けられていた嫌悪と恐怖が蘇える。
なぜ足が動かない。
なぜ声が出ない。
ちくしょうっ・・・!