第2章 伊達の流儀
どうして私などと、その刀を交換できる。
その六爪は、独眼竜の、独眼竜たる証であり、伊達軍を束ねている魂だ。
私など見捨てれば良かったのに。
どうして・・・
そしてどうして、私はこんなにも、嬉しいと感じてしまうんだ。
「愛という幻想は恐ろしいものだ。ここで女一人を切り捨てることと、自身の宝刀を手離すこと。どちらが正しい答えなのかさえも導き出せなくなる。不思議なものだ」
「テメェの物差しで俺たちを測るんじゃねぇ! 紫乃は伊達軍の一員だ! 伊達軍は一人も無駄死はさせねえ! それが伊達の流儀、政宗様のご意志だ!」
独眼竜・・・
本当にそんなことを、独眼竜が・・・?
「刀は一度くれてやる! その上で俺と勝負しろ! 俺が勝ったら、刀と紫乃は引き取らせてもらうぜ!」
「フッ、そんな体で、卿が私に勝てると思うているのか?」
目の前で刀をぶつけ合い始めた二人を見て、私は改めて、自分のなすべきことが分かってきた。
独眼竜は、私を見捨てなかった。
片倉殿がわざわざ六爪を持って、ここへ来てくれたのだ。
──私が諦めてどうする。