第1章 奥州に忍ぶ
連れてこられたのは城内の一室。
広く開放的で、そこには男が二人いた。
一人は青の袴姿で、庭で刀を振っている。
もう一人は、行儀よく正座して、それをただ見ているだけ。
この者たちが、独眼竜・伊達政宗と、その右目・片倉小十郎か。
「・・・・政宗様。客人が見えてるようです」
片倉小十郎が私に気づき、庭にいる独眼竜を呼び止めた。
思わずゴクリと唾を飲んでいた。
こちらを見据える独眼竜の眼光は、鋭く蒼い。
「・・・誰だ」
「伊達政宗殿、お初にお目にかかります。武田軍・真田忍隊、紫乃と申します」
「・・・武田のオッサンとこの忍がこの俺に何の用だ」
なんだこの男・・・機嫌が悪いのか?
熱く真っ直ぐで、そしてしたたかに強い男。
幸村様からはそう聞かされていたけれど、まだ私には失礼で偉そうな気分屋にしか見えない。