第1章 奥州に忍ぶ
奥州への道のりは険しかった。
斥候として何度か来たことがあるが、いつも足取りは重い。
あの男だらけの伊達の集団が籠る城は、特段足を踏み入れたい場所ではなかった。
奥州の城下にたどり着き、その側で高く伸びる木の枝を足場に、まずは様子をうかがった。
「・・・門に二人。たやすく入れるな」
しかし任務の内容を考えると、隙をついて城内に進撃するわけにはいかない。
私に任されているのは、伊達の情報を集めるとともに、彼らが単独で織田に挑むことのないよう、そしてどこかに敗れることのないよう今後誘導していくことだ。
それにはあの独眼竜が、私の話を聞くくらいには関係を築かなければならない。
それなら、やはり正面から向かわなければ。
私は木から飛び降りると、素早く門の前に着地した。
「なんだアンタ!?」
がらの悪い門番の二人はすぐに反応し、持っていた刀の柄を掴んで体勢を固めた。
伊達軍の城内には忍はいない。
私をすぐによそ者だと感じ取ったのだろう。
「伊達政宗殿にお目通り願いたい」
「あぁ? お嬢さん誰だ? 筆頭に何の用だ?」
「武田の使いで参った。伊達政宗殿に話がある」
「武田の?・・・まあ、じゃあ入んな。片倉様といつものところにいらっしゃるはずだ。案内すっから、着いてきな」
「よろしく頼む」