第2章 伊達の流儀
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小十郎は、広間の縁側に立ち、不穏な夜風に目を細めた。
政宗は眠っている。
静かな夜だが、なぜだか胸騒ぎがしていた。
「ひ、ひ、筆頭!! 片倉様ぁ!!!」
「どうした、お前ら」
小十郎のもとへ駆け込んできたのは、ボロボロになった四人組だった。
見栄っ張りな四人が今にも泣きそうな情けない顔で助けを求めている、その異常事態に、小十郎はすぐに詳しく話せ、と諭した。
「俺たち、松永に捕まってっ・・・!」
「筆頭の六爪と引き換えだってぬかされてっ」
「逃がされてきたんス! でも紫乃が! 紫乃がぁ!」
まるで意味の分からない説明に頭を抱える小十郎だが、紫乃の名前にすぐに反応し、問い直した。
「紫乃がどうした?」
文七郎は、落ち着いて、分かるように説明を始めた。
「紫乃さんが松永久秀とかいう奴に捕まってるんですっ! 俺らの身代わりになるって言い出して・・・! 今も、松永の屋敷に!!」
「なんだとっ!?」
「助けたきゃ筆頭の六爪を持ってこいって! 松永の野郎が!!」
すべてを理解した小十郎だが、芳しくない事態に目を細めた。
紫乃が捕らえらている。
それも、伊達軍の兵たちの身代わりとなって。
しかし求められているのは伊達の宝刀。
その複雑な状況に、どうすることが正しいのかを導き出すことに、さらに眉間にしわを寄せた。
「・・・甲斐の虎に報告する。紫乃は甲斐の大事な忍だ。向こうの判断に任せる。・・・もし甲斐の虎が六爪を差し出してくれと望むのであれば、そうしなければならない」
「そんな・・・」
できれば自分たちで助けに行きたい、そう思っていた文七郎は落胆した。
もちろん小十郎は信玄に報告したのち、自分も屋敷へ向かう決意をしている。
しかし紫乃は武田の忍。
まずは武田の判断を仰がなくてはならない。