第2章 伊達の流儀
四人はやがて見えなくなった。
どうか無事に、無事に武田に帰ってくれ。
「・・・おや、話が違うではないか。君と引き換えに竜の爪が手に入る、そういう算段ではなかったかな?」
・・・松永。
じりじりと私に迫ってくる。
柱にくくりつけられている私には逃げ場はない。
問題はここをどう切り抜けるかだ。
少しでも逃げる隙を作らなくては。
「ふん、誰が貴様の思うとおりになどするか。」
「・・・クク、いや、望んだとおりだとも。なぜ私があの者たちを易々と帰してやったと思うのだ?」
「・・・え?」
何だ?
どういうことだ?
「本来であれば私は人質を生きたまま帰すことなどしない。君の前であの者たちを惨殺することに興じても良かったのだ。
それに、君の代わりに竜の爪が手に入るなどとも思っていない」
「・・・じゃ、じゃあなぜ、私を捕らえ、四人を逃がしたのだっ・・・」
「・・・君は知らぬようだ。女性である君が、こうして敵に捕らえられると、どうなるのか」
─なんだ?なんなんだ?
何が言いたい?
「君は己に尊厳を持っているだろう。どんなときも、どんな目に合おうとも、その尊厳を頼りに乗り越えてきたはずだ。
・・・しかし、世の中には尊厳を保っていられぬ仕打ちもあるのだと、君は知っておくべきだ。
・・・親切にも私がそれを、君に教えてやろうと思うてな」
「・・・? い、言っている意味が分からぬっ・・・」
「偽善で動いた君に、後悔させてやろう。あの者たちを助けたことを。そのために生かしたのだ。
代わりに己の受ける仕打ちがどんなものか、君は知っておいたほうが良い」
────え?
松永は、ゆっくりと、私の胸元に手を差し込んだ。