第2章 伊達の流儀
「・・・よかろう。君の提案に乗ろうじゃないか。この者たちを解放してやれ」
松永の合図で、配下の武士が四人の縄を解きはじめた。
その代わりに、松永は愉しそうに私を柱にくくりつけ始める。
「紫乃さんっ、あんたっ・・・」
自由になったとたん、四人は松永を睨み付け、今にも斬りかかりそうだ。
「紫乃を離しやがれっ! 松永!」
腕を肩から振り回して殴りかかろうとする良直。
「待って! 良直! ・・・私の言うことを聞いて。お前たちはこのまま武田の城に帰ってくれ」
丸腰の四人がこのまま松永と戦っても、勝てるはずがない。
それではこうして私が人質となった意味がない。
「紫乃・・・で、でもよぉ・・・」
「私なら大丈夫だ」
松永は終止、黙って様子を見ながら笑っている。
はやく、この男の気が変わらぬうちに逃げて。
そんなとき、文七郎が良直を止めた。
「紫乃さんの言うとおり、戻ろう。今の俺たちだけじゃどうにもできねぇ・・・。武田の皆さんと、筆頭に知らせるんだ」
そうだ、行け。
「卿らが直々に独眼竜へ伝えてくれるのであればこちらも都合がいい。さあ、行きたまえ。」
「ちっ・・・紫乃! 必ず助けてやるから、そこで待ってろ!」
四人は武田の城へ走り出した。
私はホッと一息つくと、四人がもう追われていないことを確認し、その背中たちに叫んだ。
「文七郎!! このことは独眼竜にも、片倉殿にも、お館様にも幸村様にも言うな!! 誰にも告げる必要はない!! 私の力で戻ってみせる!!!」
遠くで足を止めた四人は、そんなことはできない、と首を横に振っている。
「もう一度言う!! 誰にも言うな!!」
誰にも言うな。
そうすれば、私は人質でもなんでもなくなる。
六爪のことなど関係なくなり、ただ私だけが捕られられ、自力で抜け出すだけの話だ。
それでいい。